楽観の日本

 日本人の重大な性癖のひとつをあげるならば、「楽観的予測を立て、それをもとに準備をするので大失敗する」ということがあげられる。

幕末、浦賀に黒船がやってきて日本は開国をせまられるが、断じて予測できないことではなかった。幕府はオランダと取引していたから欧州ならびに世界の事情は知っていた。アヘン戦争で清がイギリスに手痛くたたかれ、その後いちじるしく権利を制限されていることも知っていた。アメリカが英仏が来日できない間隙を縫って日本に来ることがあり得ることももちろん承知していた。

にもかかわらず、その情報は周知されなかった。理由はいろいろあるだろうが、「アメリカの軍艦なんか来るはずない」という楽観的見通しがあったことは否めない。


終戦前、日本の敗戦を決定的にしたのは、ソ連(ロシア)の参戦だった。ソ連は不可侵条約を結んでいたから長く攻めてくることはなかった。しかし、そのときすでに条約は破棄されており、ソ連は日本侵攻に向けて準備をはじめていた。国境を接する満州でそれに気づかないはずはない。知っていたのだが、例によって「ソ連は攻めてこない」という楽観的見通しをたてた。


日本が過去に楽観的予測に基づき大失態をおかしていることは、『シン・ゴジラ』にも描かれていた。周知の事実であり、あの映画は「それじゃダメだ」と声高に主張する作品でもあった。


ところが――またお家芸を見た。どうも為政者どもは、反省することができないらしい。


コロナウィルスが猛威をふるい、全世界に感染者があふれた。日本は幸いにも欧米ほど

手ひどい目にあわずに済んだが、終わったわけではない。オリンピックの開催時期と大流行が重なることはじゅうぶんにあり得た。


しかし、例によって考えたのだ。「そんなこと、起こるはずないよ」


酒類の販売も考えられ、有観客での開催が期待された。どちらも、できなかった。コロナが猛威をふるいはじめたからだ。もともとそれを想定外において立案された予定は、ほとんどが変更されねばならなかった。


またかよと思いつつ、同じ例があったことに思い当たった。原発事故だ。

学者の意見の中には、過去に巨大な津波が襲った例があること、したがってきわめて危険であることを指摘したものもあったが、もちろん聞き入れられなかった。「そんなでかい津波なんてきませんよ」根拠のない楽観が、あの地を死の街にした。


どうやら塗る薬がないようだよ。

この物語は、その認識からはじまる。


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