ヴェニス

 自分はざまあみろという感覚を感じながら生きていた。ふだん人でごった返しているところが無人になっているのを見るといい気味だと思った。ヨーロッパの美しい街、たとえばヴェニスのような街がロックダウンしていると聞き、テレビモニタに人のいない大通りが映し出されると、観光地だった水の街ヴェニスの風景よりずっと親近感を感じた。


そんな感覚を抱いているのは自分だけではないだろう。世の中に不満を抱いているやつはいくらもいるはずだ。それはなぜか確信になっていた。元の世界がなつかしいという言辞を聞くたびに思った。おまえの言う元の世界はおれには居心地が悪かった。今も居心地よくないが、昔もよくなかった。つまり、たいして変わっちゃないさ。


怒るやつもいるだろう。怒れ怒れ。死ねと思うやつもいるだろう。残念ながら人は簡単に死ねないのだ。死にたいここにはいたくないと願うだけで死ねるならおれはここにはいない。


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