wasteland
そこはわたしが妻とふたりの子をもった大事な土地なのであるが、幾度となく通過し、場合によっては街をぶらつくことがあっても、感傷的になることはなかった。それはひょっとすると、自分が過去にたいする感情を失っているせいかもしれなかった。
ところが今日、駅を列車で通過しただけなのに、胸がいっぱいになった。悲しくて悲しくてたまらなくなった。そんなことははじめてのことだった。
春の陽気のせいかもしれない。わたしは子と無理矢理に離された親犬の悲痛なる叫び――わたしはそれを聞いたことがある――を、思い浮かべずにはいられなかった。そして。声に出すことはなかったが、その叫びをあげた。
(3/12)
コメント
コメントを投稿