来る

  ひどく怖かった。


 デスクの灯りをつけ、なにか楽しいことを考えようと思った。どうしてもできなかった。さみしくてさみしくて、死んだほうがずっといいと思った。風がガタガタと窓を揺らす。救急車のサイレンの音が聞こえる。誰かが死ぬのを待っている。


 風がふたたび音をたてた。なにか伝えたいけれど、うまく言えないので小声でうなっている。サイレンの呼びかけに応じるように犬がほえた。すごく気が滅入って、おそろしかった。


 肩に這い上ってくるものがある。小さなクモだった。思わずたたきつぶすと、緑色の体液が手についた。それをティッシュでぬぐいながら、ああこれは何かいやなことが起こる前ぶれにちがいないと考えた。なにか魔除けのまじないはないものかと思った。


 まるでなにかが呼び寄せたように、ふたりの男が戸口に現れた。



 とりあえずは不運ではないと思った。わたしはここが――いや、鈴村さんが好きじゃなかった。ここから連れ出してくれるなら、喜ぶべきことかもしれない。彼らがここからどこに連れていこうとしているかは知っていた。痛いし、気持ち悪いし、臭い。それでも、ここよりずっとましだと思った。


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