芥川1

 『今昔物語集』は天竺(インド)、震旦(中国)、本朝(日本)を舞台とする千以上もの膨大な数のストーリーから成り立っている。編者に「全世界の話をすべて集めてやろう」という遠大な野望があったことがうかがわれるが、残念ながらここでは、その野望については述べない。この時代だからこそ抱けた希有な野望なのであるが!

 芥川龍之介はここに所載されたストーリーをもとに処女作『鼻』を書いた。これが夏目漱石に認められ、彼の生涯にわたる夏目への師事と文壇デビューのきっかけとなる。その後彼は『羅生門』『芋粥』『藪の中』など、『鼻』同様に『今昔物語集』をはじめとする平安時代の説話文学に材をとった作品を次々と発表した。おそらくは師も編者もそうあることを期待していただろうし、作家本人も(すくなくとも当時は)それを求めていたのだろう。

ここで述べたいのは芥川の『好色』という短編、およびその元となった『今昔物語集』第三十巻第一話に所載されたストーリーだ。


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