今昔物語集巻二十七第九話
遅刻した。上司の弁官はすでに参内している。役所の壁には、弁官の車が立てかけてあって、使用人が退屈そうに庭を眺めていた。すみません、おくれました、と言いながら部屋に入ったが、声がしない。怒鳴られることを覚悟していたから拍子ぬけして眺めると、なにやら汚いものが落ちている。血に染まった髪の毛だった。そこから、弁官の座席まで血痕が続いていた。
誰が。なんのために。自分にはまったくわからなかった。ただひとつ言えることは、自分は彼がいなくなって得をしたということだ。昇進したのだから。
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